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2025/09/03 14:23

植物を育てるワーディアンケース - 19世紀の貴族が愛した小さな温室
テラリウムで植物を育てることに少し慣れてきて、大型のテラリウムに挑戦したい。
育てる機能だけでなく、インテリアでのおしゃれさも重視したい。
機能的な水槽やプラスチックケースだけではちょっと物足りなかった、そんなご要望に応えるガラスケースを企画しました。

19世紀。ヨーロッパの貴族が、遠い異国の地の植物を愛でたように。
光を取り込み、植物を愛でられる、部屋の中に置けるちいさな温室があったら。
テラリウムの起源とも言われる『ウォードの箱(ワーディアンケース)』を復刻させるべく、ガラス作家のIKUITさんと一緒に製作に取り組んだ、特別なガラス容器をご紹介します。
ワーディアンケースに詰まった憧れ
まずは、『ウォードの箱(ワーディアンケース)』についてお話しさせてください。
18~19世紀の大航海時代。
イギリスやオランダは、世界中の珍しい植物や有用な植物を求めて、異国の地に多くのプラントハンターを派遣していました。
飛行機のない時代の長い長い船旅。当時、生きた植物を持ち帰るのは至難の業でした。
そこで発明されたのがウォードの箱。

「ヨーロッパの歴史Ⅱ-植物からみるヨーロッパの歴史-」(放送大学教材)より
密閉されたガラスケースの中で蒸発した水分が結露して土に戻ることを発見したウォードは、6カ月もの船旅でシダを元気に持ち運べることを証明しました。
ワーディアンケースは、まだ見ぬ魅力的な植物をもたらしてくれる、魔法の箱だったのです。

ちょうど同じころ起きていたのが、ロンドンでのシダブーム。
産業革命による深刻な大気汚染が起こっていたロンドンでは、日陰に強く、空気の汚れにも強いシダが人気となっていました。
ガラス素材が安価に手に入れられるようになってきたことも相まって、一般家庭でもガラスケースでシダを育てることが流行るようになりました。

大気汚染によって屋外の園芸が楽しめないこと、日光不足で育てられる植物の種類が限られていたこと。
自然を楽しむ環境が限られていたからこそ、テラリウムの人気に火がついたのでした。なんだか現代の話のようですね。
ステンドグラス作家・IKUITさんによる完全手作り品
今回、現代版『ワーディアンケース』の製作に協力してくれたのは、愛知県を拠点に活動するステンドグラス作家のIKUITさん。

ご自身でも、ステンドグラスの手法を使い、植物を育てる容器としてのガラスケースを作られています。


道草がオリジナルデザイン案を出し、いくつもの試作品を経て改良を重ね、道草とIKUIT双方が納得するワーディアンケースが完成しました。
デザインは、温室を思わせる屋根つきのスタイル。

屋根部分には、色ガラスと装飾ガラスを1枚ずつポイントに使いました。
緑色のガラスは輸入品で、手作りによる色ガラス。
微妙な色の濃淡が美しい1点物で、切り取られた場所によって少しずつ味わいが異なります。

1枚の板ガラスから切り出しているので、1点ずつ模様が異なること、多少の気泡が入る部分があることはご承知おきください。
すりガラスのような模様が入ったガラスは、グルーチップガラスと呼ばれるガラス。
古い窓ガラスの装飾に使われていた技法で、シダの葉や羽のような模様に見えるのが特徴です。

サイドは植物を鑑賞しやすいよう、あえて装飾ガラスは使わず、シンプルに仕上げました。

植物育成に適した、こだわりのデザイン
植物を育てるケースとしてこだわったのは、ケースの開け閉めと換気のしやすさ。
植え付けやメンテナンスのときには、大きく蓋が開く必要があります。

作業に両手が使えるよう、蓋を固定できるガイドを特注で作っていただきました。

ガイドを使って蓋を最大まで開けた様子。メンテナンスや植え付けなどの作業がしやすい設計です。

また、ガイドを縁にかませることで、通気のための隙間を2段階につくることができるようになっています。

植物の種類や状態によって、通気の加減が変えられるので安心。
もちろん、ガイドを使わないで密閉度高く使うこともできます。

屋根の一番高いところまでの高さは23㎝。
苔だけでなく、シダやジュエルオーキッドなど背が高くなる植物も安心して植えられる大きさです。

流木や石を使って高さを出したレイアウトにするのも素敵ですね。
限定数のみの生産です。この機会をお見逃しなく!
今回販売するワーディアンケースは、主に国産ガラスを使い、IKUITさんがすべて手作業で仕上げた1点物となります。
まずは10点のみ、限定数での発売となります。

手に入れる機会は限られていますので、どうぞお見逃しなく。
(同じデザインでの再販は予定しておりません)
販売開始は9月13日の予定です。このガラスケースを使った動画も公開予定ですので、お楽しみに。